地獄から夢をみる1週間をお送りします

卒論提出まで、のこり1週間を切ってしまった。

まだ大丈夫、大丈夫だからと安心するも、半年が過ぎ 提出日は目前。

 

終わったー! 

 

となりの研究室にいる学生は、今日もまたひとり 達成感を味わっている。

 

 

 

秋からだろうか。

 

パソコンと毎日にらめっこしていた勤勉な学生たちも、

日に日に減っていく様子を見てみぬふり。

 

葉っぱが散りはじめる儚い時期は、なんだかやる気を起こらないもの。

 

そのときが一番の踏ん張りどころと知ったのは、つい最近のことだ。

 

焦りと不安を覚えながら、いまは十分な睡眠時間を確保できない毎日を送っている。

 

 

 

 

 

 

 

午前4時過ぎ。

 

今日も遅くまでゲームをしてしまった。

 

ドラクエの後に、ミクさんに会うと時間を忘れてしまう。

 

会える時間を前倒ししたほうがいいかもしれない。

 

明日は朝早いが、寝ようか寝まいか迷っていては、ますます睡眠時間が短くなる。

 

やっぱり寝ることにしよう。

 

頭のなかで すぐに醒めないことを祈りつつ、横になった。

 

 

「あの、すみません。やっぱりテーマを変えることにします」

 

「そうかぁ、いい展開だったんだけどね。

 卒研はね、学術的で立派なものだと捉えているから難しく思えるし、

 いつまでも やる気が起こらないのはそれが理由なんだよ」

 

「……はい」

 

「どうして研究をやるのか、そこから考えてごらん。

 誰のための研究だと つむぎこくんは思う?」

 

「じ、自分のためですか?」

 

「そう、自分のためにやることなんだよ。それを最後まで見失ってはいけない。

 きみはいま 20年と少し生きてきて、何を思ってる?」

 

「えっと……少し遠回りしてしまったこととか」

 

「ほう、この前言ってたアレかい?」

 

「はい」

 

「うん。 でもね、医学的な話はこれから論文にするには

ちょっとは君にはつらいのかもしれないよ」

 

「あ、はい」

 

医学生にまつわる話はしたよね?」

 

「はい。 この前、お聞きしました」

 

「だったらいいんだ。 話をもどそうか」

 

 

明るい話を聞きたい。 いや私が話すべきなのか。

 

いただいた緑茶を口にしたが、会話によく発生する「間」は今も苦手だったことを思い出す。

 

 

「そうだねぇ……身の回りで思うことから、自分の趣味のことでもなんでもいい。

 何か気になることはないかい」

 

「……ゲームとか」

 

「いいね、何のゲーム?」

 

「最近、やめていたネトゲにちょっと熱中してて……」

 

「ネットゲームかぁ、あれはハマると危ないよね」

 

「あ、今はそこそこ大丈夫です、別のゲームと並行してることもあって」

 

「もうひとつはネットゲーム?」

 

「いえ、初音ミクのプロジェクトディーバっていうゲームです」

 

「ほう、それはどんなゲームかな?」

 

おもむろにペンを取り出した先生は、私が発した言葉にメモをとっていく。

 

「えっと、曲が流れるので タイミングよくボタンを押すゲーム。

 ではあるのですが、その……背景で動くキャラクターがかわいいんです」

 

「いいねぇ、キャラクターがかわいいのね。 動くキャラクターはひとりだけ? 」

 

「いえ、何人かいます」

 

「そのなかで、つむぎこくんが好きなキャラクターはいるのかい?」

 

「ミクさんです。あ、ルカさんも好きです。 ……どっちもです」

 

「2人? 両手に花じゃないか!」

 

 

ちょっと意味がちがう気がする。

 

 

「2人の画像はいま見ることできるかな?」

 

「画像あります、ちょっとまってください」

 

 

ポケットから携帯を取り出し、キャラクターが映った画面をみせた。

 

 

「こちらがミクさんで」

 

 

 

初音ミク Project DIVA Future Tone DX__1.jpeg

 

 

 

「こちらはルカさんです」

 

 

 

初音ミク Project DIVA Future Tone DX_.jpeg

 

 

 

「ほうほう」

 

 

向かいの紙が見えない。 名前をメモしているのだろうか。

 

 

「じゃあ次に、そうだね。 どういうところがかわいいと思ったんだい?」

 

「えっと……」

 

 

どこがかわいいと思ったのか……どうする、答えられない。

 

 

「すみません、でもかわいいのは既成事実です!」

 

「そこを答えてほしいんだ、つむぎこくん」

 

「でも、その わからなくて……」

 

「わからないんだね、よし」

 

 

え?

 

 

「どうしたんだ? わからないことがあるのは、可笑しいことじゃないよ?」

 

「あ……はい」

 

「そうだね。 まずは彼女たちの魅力を知ることからはじめようか」

 

 

ミクさんとルカさんの魅力……。

 

 

「あの、これって……まさか」

 

「そのまさかさ。笑

 これはね、きみの、ここだけの、”卒業研究”だ」

 

 

……。

 

 

…………ん?

 

 

卒論提出日まで、のこり1週間をきっているというのに……。

 

 

でも、なんだかとってもおもしろそうだ。

 

 

 

 

以下モジュール&髪型

 

ミクさんはエンジェル、髪型はCA初音ミク

ルカさんはCheerfulルカ、髪型は放課後モード

 

 

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一部、表現の誤り。加筆修正しました。