地獄から夢をみる1週間をお送りします その5

 卒業論文提出日。

たびたびゼミを抜け出した哀れな自分を認めながら、許しを請う。

 

「いやなことから逃げたくなるのは人間の習性だからね、しかたないよ」

 

「……はい」

 

「とりあえず形だけは整えて提出はしよう。 いいね?」

 

「あ、はい」

 

拙い文章の紙束をパラパラと先生はめくる。

 

「内容はこれでいこうか、あと体裁なんだけれど」

 

「すみません、文章書くのが苦手で」

 

「大丈夫だよ、手直しはいっしょにやろう」

 

 

提出日に体裁を整え始めるのは、普通なのか。

 

いや普通ではないと思う。

 

どうしてこんなことになっているのか……。

 

理由はわかっているのに、一向に進まなかったのがなんとも哀しい。

 

 

 

 

 

ふぅ、おわった。

 

「先生、これで」

 

「よし、完成したね。 おつかれさま」

 

「ありがとうございます」

 

深々と頭を下げる。

 

「では先に提出してきますので」

 

研究室のドアノブに手を伸ばしたとき、

あぁ、そういえば。と例のメモを差し出される。

 

「つむぎこくん、この研究のことでね」

 

それは……。

 

「これはこれでまちがってはないと思うよ?」

 

「でも、論文にするにはあまりにも」

 

「そうかぁ。 また何かおもしろい発見があれば、追ってみるのもいいよ」

 

「は、はい」

 

「まぁでも完成して本当によかった」

 

「本当にありがとうございます」

 

モジュールに焦点をあてたと思われる、

あの研究もどきも決して無駄なものではなかったのだろうか。

 

 

この1週間、現実に目を背けながら

自分にとって都合の良い妄想を思い描いてきた。

 

年末年始から腰を据えるも、気が付けばテレビゲームの日々。

 

もう書き終えるのは無理かと思ったが、別テーマに急遽変更。

 

なんとか提出に間に合ってよかったと思う。

 

次に押し寄せる魔物は、おそらく「口頭試問」。

 

個々の研究成果がいま暴かれる――。

 

 

 

 

おわり