冬眠中の彼らにさよならを言う

 

リス、あるいはコウモリ

 

冬眠中の彼らは、ぼくが近づいても顔を出さないつもりでいる

 

やはり新しいはるだけを待ち望んでいるのだろう

 

牡丹雪が降る裏山で白い息をはく

 

聞こえなかったのならそれで構わない

 

裏山だけではないが、暖かい見送りなど期待はしていないのだから

 

 

視界を埋め尽くす灰色の空を見上げた

 

たしかにあの男は言っていた

 

「次に会えたときの報告を楽しみにしているよ」

 

次とは一体いつのことなんだ

 

数年後……いや数十年後でも待っていてくれるのだろうか

 

そうだとしても、交わした約束は果たさなければならない

 

 

その場で振り返ると、点々とした足跡は白く覆われはじめていた

 

裏山で無邪気に遊んでいた日々がなくなるように、雪にかき消されていく

 

まるで一時の夢をみていたとでもいうのか

 

冷えた拳に力は入らない

 

白銀の世界に消し去られる前に、ぼくは自ら足跡を強く踏みつけた

 

必ずとりもどす

 

泥にまみれたつり銭を