想像した世界は記憶のままで

 

それが原作のアニメ化における真髄だろう。

 

 

とある魔術の禁書目録」というライトノベルがある。

 

初めてアニメ化されたのは10年前(2008秋~)だが、そのシリーズの続きである3期が今秋から始まった。

 

ここ数年、趣向を凝らしたアニメが次々と台頭してきても、食指が動かなかったわたしが密かに期待して追いかけていたシリーズ。

 

2期(2010秋~)から8年が過ぎた今、まさに待望の3期であった。

 

アニメをみて思い当たるふしがいくつかあるが、今日はひとつだけ言いたい。

 

 

展開の早さだ。

 

 

3期で原作のストック(未放送分)をどこまで消化するつもりなのかわからないが、貴重な1巻を3話にまとめて放送している。

 

イギリス編とロシア編を上手くカットするのか否か、それはさておきとして問題なのは難解なストーリー。

 

アニメの展開が早すぎるため、数年前に原作を読んだわたしでも、1回の視聴では話の流れについていけなくなった。

 

特に顕著だったのは第4~6話。

 

主人公が入れ替わって一方通行が主役を張り、闇に這う科学サイドの暗部編。

 

登場人物が過去とは比べ物にならないほど多く、5つの暗部組織が複雑に絡んだ群像劇が特徴である。

 

垣根提督との戦闘や「アイテム」の崩壊など見どころが沢山あり、わたしが3期でこの上なく期待していた15巻のアニメバージョンだった。

 

だがしかし、そんな暗部編が簡単なキャラクターの紹介と脱落シーンをまるでダイジェストのように放送されることとなった。

 

キャラクター同士の会話や独り言のカットは予想していたが、キャラクターを掘り下げるシーンをもう少し描いてほしいと思った。

 

暗部編に限らず、この作品のキャラクター達は「守りたいもののために戦う」ことがひとつのテーマとなっている。

 

だからこそ、守りたいものへの想いの描写や各地で起こっている状況の把握ができず、最終的にストーリーが難解になったと考えられる。

 

また、暗部編ではバトルロイヤルのように脱落者が次々と増えていく。

 

原作では各ページの挿絵に生存リストが描かれ、読者に分かりやすく伝えられる工夫を凝らしていた。

 

アニメでもこのような一工夫があれば、より面白く仕上がったのではないだろうか。

 

 

 

もちろん良かった点はある。

 

一方通行と垣根提督の戦闘シーンのCGは今の技術に合わせた緻密な描写で素晴らしかったこと。

 

そして好きなキャラクターのひとり、海原光貴 (エツァリ)の登場と会話シーンが長かったことだ。

 

良かった点があったからか、カットによる話の難解化が気になって以上の記事をかいた。

 

全体的にみてもあと1話余裕があればといった懸念は払拭できないが、残りのアニメ化を期待していきたい。

 

 

 

余談だが、今は第8話の視聴が終わった。

 

8話の後半で流れたBGM「吸血殺し」

 

数年ぶりに聞いて、ふわっと心が落ち着いた。

 

静かな夜の学園都市によく似合い、数あるBGMのなかでは群を抜いて心地よいサウンドだろう。

 

今とは異なる1期のキャラクターデザインと作風を思い出させる音楽だが、その先の想像した世界は記憶の片隅においておきたい。