前夜に厭う

不意の甘味は震える心をそっと撫でた

次の太陽の訪れには不安が募るばかり

横たわる僕は天井をしばらく見つめていた

 

変化を恐れた人間が得られるものは何か......

 

愚問に思考を巡らせたとき、ある記憶を呼び起こした

それは新人大会に向けて練習に励む部活動のはなし


「お前はもう普通じゃない」


休憩中、かつての恩師に浴びた喝破

そこに胸倉を掴まれた僕と呆然と立ち尽くす同期たち

予想だにしなかった2年ぶりの対面は挨拶もしに火蓋を切った


この日は高校生活の実に半分以上を捧げた部活動で、徳を積み上げてきた僕が暴かれた日でもある

幽霊部員でもある現実を既に受け入れていたため、辻褄合わせの問いに聞く耳すら持っていなかった

 

つまり前述の一言しかほとんど記憶にない


恩師には難儀していた僕の進学先を勧めた人物でもあった

手間がかからない従順な生徒を買い被るのは致し方ないだろう

信頼していた生徒がこの有り様、あの怒りは本物だ


そんな重苦しい空気に同伴している彼らへ視線を向けると、皆揃って同じ顔をしていた

同期の話によれば、当時の僕は息を詰まらせながら薄笑いしていたのだと

その日が境だろうか

部室にある僕の名札は黒板の隅にずっと固定されていた

 

上記を呼んだ理由には思い当たる節がある

それは、捨てた思念を拾いたいという淡い期待を未だ持っているということだ

反省ならぬ半生を語れはしない

だが同期と共に過ごした場所に今もなお留まっている

かつて卒業時に彼が存在意義を見出したように

 

迂回に転回、さらには撤回の業を重ねた僕に挽回の道はみえていない

みえていないけれど

明日、僕は黒く染まった溝へ初めて手を伸ばすことになるだろう

5年前の今日、僕は「つり銭」と名付けた